東野圭吾「幻夜」。帯には「よみがえる『白夜行』の世界」とあるが、テーマ、内容、叙述形式などが共通で、時代的にも「白夜行」が73年から92年、本作が95年から00年と繋がっており、実質的にシリーズ第2作といえる。物語は独立していて、「白夜行」未読者と既読者とでは読後に違った謎が残ると思う。
前作の主人公は1組の男女、彼らが近くの人を踏台にし、立場が危うくなると殺人さえ厭わずにのしあがっていく様子を描いた。本作の主人公美冬の生き方は、前作の2人そのまま\。前作は一貫して三人称、その視点は節毎に登場人物を移り変わったが、最後まで主人公2人の視点で語られることはなく、結果的に彼らの犯罪行為のほとんどはそれが示唆されるのみであった。この叙述上の大きな特徴も引き継がれている。伏線の張り方なども前作と同様見事。
前作になかった立場の人物 (ある意味主人公、というか狂言回し系か) である水原雅也が面白い。前作の亮司的な汚れ役もするが、美冬にとっても雅也本人にとっても、完全には置き換え切れない中途半端な立場。主人公ではないので、雅也視点で語られる部分もあり、前作にはなかった殺人の場面やその後の犯人の苦しみなどもリアルに描かれる。
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