山田風太郎「八犬伝」。曲亭馬琴の「南総里見八犬伝」の風太郎版、というからには普通ではない:)
山田風太郎の文章で「南総里見八犬伝」のダイジェストが読めるわけだが、これが馬琴の口から周辺の人物 (前半は北斎、ついで華山やラストでは嫁で視力を失った馬琴の口述筆記者となったお路) に構想を語る、という形を取っている。なので、冗長な部分、面白くない部分 (というか風太郎が面白くないと思った部分) などは削ぎ落とされ、かつ解説的なことが馬琴の口から語られる。
原作は、晩年に書かれた最後の部分で冗長な部分が目立つ、ということだが、本作ではその分馬琴の実生活の方が壮絶になってきて、こちらがメインになってくる。この辺も、虚の物語と実の物語を同時進行させる工夫が生きてきている、というか、このためにこのような書き方をしたのではなかろうか。
「南総里見八犬伝」がめちゃめちゃ面白い、というのは御存知の通り。
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これは「南総里見八犬伝」の数代後の物語、という設定で、里見家の家宝となった玉を、おなじみの悪役本多佐渡の策謀で服部半蔵率いる伊賀忍者に奪われ、甲賀で忍法の修行をした八犬士の子孫が奪い返す、という物語。伏姫を彷彿とさせる姫 (その名も村雨、偽名で浜路) とか、八房とそっくりで名も同じ八房という犬が8頭も登場するとか、敵方の伊賀くノ一の名が玉梓やら船虫やら原作で聞いたような名前だったりするとか、果ては滝沢瑣吉 (つまり馬琴と同名) なる小物の最後のセリフとか、オマージュがいっぱいちりばめられている。
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